Research

研究内容

微生物工学研究室では、 環境問題や食品産業に関連する新規微生物の集積、分離、同定からゲノム解析、遺伝子発現解析、タンパク質発現解析まで幅広い技術を用いて「微生物の生き様に関する世界に類のないオリジナルな基礎・応用研究」を目指しています。

嫌気呼吸細菌に関する研究

私たちが酸素を呼吸するように、ある種の細菌は酸素以外の物質(硝酸、鉄、硫酸など)を呼吸します。微生物工学研究室では、未だ研究例の少ないヨウ素、ヒ素、アンチモン、バナジウムといった物質を呼吸する細菌を世界に先駆けて分離し、その嫌気呼吸様式の解明を目指しています。特に、その鍵酵素であるモリブデン-鉄硫黄タンパク質複合体(MopB)に着目して研究を進めています。さらに、このような嫌気呼吸細菌を環境浄化(バイオレメディエーション)に応用する研究も実施しています。

微生物を用いたバイオレメディエーションに関する研究

ヒ素を呼吸する細菌と、ヒ素を高蓄積する植物(モエジマシダ)を組み合わせることで、ヒ素汚染土壌からヒ素を効率的に取り除くことができます。これにより、簡便かつ安価なコストで土壌汚染の浄化が可能となります。また、除染処理後にシダを焼却することで、廃棄物の量を飛躍的に減少させることも可能です。

発酵食品や醸造醪(もろみ)中の微生物菌相解析

これらは千葉県内の民間企業とのコラボレーションになります。発酵キムチやサトウキビから作る蒸留酒(ラム酒)の発酵過程で優占する微生物(乳酸菌や酢酸菌、酵母)を培養法や次世代シーケンサーを用いて解析し、その動態を科学的に理解します。また、優良微生物を選抜しスターターとして利用することで、安定した発酵や過発酵の防止、優れたアロマやフレーバーを付与した新しい製品の開発にも貢献します。

嫌気性微生物の機能を用いた新規土壌消毒法の開発

作物の連作障害を防ぐため、土壌消毒は必須の技術です。現在、クロルピクリンやD-Dが土壌くん蒸剤として使われていますが、刺激性や毒性が強いという欠点があります。近年、環境保全型の土壌消毒法として土壌還元消毒(ASD)が注目されています。ASDは、有機物を土壌に混和し、灌水、被覆することで土壌を嫌気化(還元化)し、植物病原菌や線虫を消毒する技術です。私たちは、ASDの過程で優占する嫌気性微生物の分離培養に成功し、この菌が生産するある種の揮発性脂肪酸を土壌に直接施用することで、ASDよりも安価で安定した土壌消毒が可能か検証を行っています。